毎日新聞
「車中泊避難」で指針 政府が策定検討
政府は、熊本地震で課題となった「車中泊避難」について、新たな指針などを策定する検討に入った。国の防災基本計画や避難所運営ガイドラインは車中泊対策に触れておらず、自治体の地域防災計画にも盛り込まれていないケースが多い。今後、地域防災計画などを修正する際の参考となるよう対策を講じる。
熊本地震は大きな余震が続き、「屋内が怖い」と車で寝泊まりする被災者が相次いだ。長時間の車内避難生活はエコノミークラス症候群の原因となり、死に至る場合もある。車中泊が原因とみられる震災関連死は2004年の新潟県中越地震などで注目され、熊本地震でも犠牲者が出て問題化した。
これまで政府は「まずは避難所の整備が重要。車中泊での避難は好ましいとは言えず、計画などに盛り込むと車中泊が肯定される可能性がある」(内閣府の防災担当者)として、二の足を踏んできた。
だが、今後想定される災害でも車中泊避難が多発する可能性があり、政府は一定の対策が必要と判断した。具体的には、指定避難所の駐車可能台数をリスト化▽避難所以外で車中泊する被災者を把握できるよう大型駐車場の場所を事前に把握▽エコノミークラス症候群を防ぐ効果がある弾性ストッキングを備蓄▽車中泊の被災者に速やかに避難所に移ってもらうよう働きかける−−などの対策を検討している。
国の防災基本計画は「避難所に滞在できない被災者にも物資の配布や医療サービスの提供などに努める」と規定し、避難所運営ガイドラインも弾性ストッキングの配布を勧めているが、車中泊を前提とした対策はなかった。【石川貴教】
大半の自治体、対応未作成
毎日新聞の調査では、関西の府県庁所在地と政令市、中核市の計14市のうち、地域防災計画などに車中泊避難への対応策を明記しているのは大津、和歌山、豊中(大阪府)の3市にとどまった。
大津市は避難所運営マニュアルに「車中泊者への対応等」の項目を設け、車中泊をしている人に避難所への移動を勧めたり、エコノミークラス症候群の予防を周知したりするよう記している。室崎益輝(よしてる)・神戸大名誉教授(防災計画)は「プライバシーの確保や子育て、ペット同伴などを理由に車中泊を選ぶ人が少なくない。熊本地震の事例を検証し、事前に対策を取るべきだ」と指摘する。
一部の民間企業には対策に乗り出す動きもある。店舗に大型駐車場を抱える小売り大手「イオン」は、災害時に緊急避難場所のような支援拠点となる店舗を2020年度までに全国で100カ所に増やす計画だ。2月時点で大阪や和歌山など27カ所が整備され、自家発電施設を備える。
同社は熊本地震でも、安全が確認できた店の駐車場を被災者に提供した。担当者は「自治体とも協力し、車中泊への支援策を考えていきたい」と話す
ニュースサイトで読む: http://mainichi.jp/articles/20160512/k00/00e/040/235000c#csidxc5670f384739820999d38ae627b4640
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NHK
女たちの大震災
~最新医療が迫る 体と心のリスク~
http://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20170117
2017年1月17日(火)
午後10時25分~11時15分 総合
- 災害
6434名の命が奪われた阪神・淡路大震災から22年。これまで女性特有の被害に焦点を当てた研究はほとんど行われてこなかった。しかし神戸周辺の拠点病院に残されていた被災直後の「入院患者3500人の診察記録」を分析した医師は、ストレスが多い避難所生活で、女性の方が血栓(血管内の血のかたまり)ができやすいことや、脳卒中を発症する割合が急増していたことを解明。 さらに血栓が体内に残り、発症の危険性が長期間続くことも分かってきた。分析結果をもとに試算すると、体内に血栓が生じていた被災女性は推計1万人、22年たった現在も血栓のリスクを抱え続けている人は少なくないというのだ。
一方、女性の心も蝕まれていたことが分かってきた。被災者への大規模アンケート調査では、「震災を思い出して眠れない」という回答が、一貫して男性よりも高い割合を示している。脳科学の専門家は、災害によって体内に生じるストレスホルモンが制御できなくなり、不安感が長期間消えない女性特有のメカニズムを指摘している。
震災から22年間、心身に潜む危険性に気づかないまま、女性たちは体調不良や不安感と向き合ってきたのだ。
番組では、女性の犠牲に気づかぬまま進められてきた「復興」や「防災」のあり方を問い直し、災害列島・日本で、今後どのように女性の心身を守っていくべきか考える。
関西出身の私にとって、阪神・淡路大震災は忘れ難い記憶です。
空襲を受けたかのように焼け野原となった神戸の姿は、今も鮮烈に思い出されます。
あれから22年、数多くの災害が日本を襲っています。
阪神・淡路大震災の衝撃も、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」のごとく、
年々風化し、もはや“過去”になったではないかと感じることもあります。
今回私たちはあえて、「女性」という視点で、あの震災を捉えなおすことを試みました。
これまで余りされたことがないアプローチですので取材は難航しましたが、
結果として、知られざる阪神・淡路大震災の一断面が見えたように思います。
取材・放送を終えて改めて思うのは、
「あの大震災には、まだまだ目を向けないといけないことが存在する」ということです。
私たちがまだ知らない事実や、次の災害で命を守るための教訓が、
22年経った今も、誰かに紐解かれるのを待ったまま埋もれている…と感じます。
その1つでも多くを紐解くことが、犠牲となった方々に報いることにもなり、
かつ次の巨大災害に備えることにもなる。
忙しい毎日に追われ、過去のことはつい忘れっぽくなる自分を戒めながら、
これからも取材を深めていきたいと思います。
ディレクター 先﨑壮